SEVEN MAGIG GIRLS

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指輪

「うー……」
「何してるんです?兄様」
何の前触れもなく突然後ろから声をかけられ、びくっとリーフの肩が跳ねる。
「ミュ、ミューズっ!!何で城下に……」
「見回りですけど?」
あっさり流されて、リーフはぴたりと動きを止めた。
それを不思議に思い、ミューズは兄を避けるように彼が見ていた店を覗き込む。
「あら?」
「うわっ!ちょっと待て……」
慌ててリーフが視界を遮ろうとするが、時既に遅く、ミューズの視界には、色とりどりの宝石がはまったアクセサリーを売る店が入ってしまっていた。
「いや、その、これは……」
「わかってる。セレスさんへのプレゼント選びでしょう?」
見抜かれていたらしい。
くすっと笑うミューズの言葉にリーフは思わず赤面する。
「周りの女性の視線には鈍感な兄様がこういうお店を見ているときは、必ずセレスさん絡みだから」
「悪かったな。鈍感でワンパターンで」
「いいんじゃない?その方がセレスさんも安全でしょうし」
その言葉に何か含みがあることは承知しつつも、口では敵わないということがわかっているのだろう。
「そうかもな」
あっさりとそう返すと、リーフは再び商品の方へ向き直った。



「なあ、ミューズ」
暫くして、まだ後ろに妹が立っていることに気づくと、不意にリーフは彼女に声をかけた。
「はい?」
「お前は貰うんだったらどれがいいと思う?」
あれだけの時間商品を眺めておいて、まだ決まっていなかったらしい。
小さくため息をつき、ミューズも隣から商品を覗き込んだ。
「そうね・・・」
ふと、辺りを見回す。
「私のような剣士だったら、指輪はまず除外かしら」
「何で?」
「兄様、戦っててわかりません?剣を握るとき指に何かつけていたら邪魔なのよ」
「ああ、確かにな」
納得して自分の手をじっとみる。
自分が自由兵団を継ぐ前の現役時代の父も、今は毎日必ずと言っていいほどしている結婚指輪をしていなかったことを思い出す。

「だけど」

ふと、ある方向に視線を止めて、再びミューズが口を開いた。
「魔道士なら指輪の方がいいかもしれないわね」
「何で?」
「よく見て、兄様」
中央通りを抜けた先、広場の一角を示してミューズが続ける。
「魔道士は一般的にマントを着用しているでしょう?だけど、手袋はつけない方が多いの、ご存知かしら?」
「え……?」
言われてみれば、確かに広場付近に集まっている魔道士の多くがマントをつけているが、手袋をつけている者はほとんどいない。
「でもリーナは……」
「魔法ギルドに所属する方に聞くと、国ごとで魔道士の基準とする格好が異なるそうよ」
「え?」
あっさりと意見を阻まれ、リーフはぽかんとした表情で立ち尽くす。
まさか、妹がここまで他の職業に詳しいとは思わなかったから。

「もっとも私にしてみれば、そういう物より武具の方が嬉しいですけどね」

失礼しますと短く告げて、ミューズは一足先にその場を立ち去る。
しばらく呆然とその姿を見つめていたリーフは、不意にしゃがみこんでひとつの指輪を手に取った。
「これ、頼む」
「はい、毎度。リーフ様には特別に割引させていただきますよ」
にこにこ笑って気前のいい女主人が商品を手渡す。
代金を払って礼を言うと、リーフは早足で城の方へと歩き出した。

その手にしっかりと包まれた指輪を持って。

2003.3.25