Side Story
魔法剣特訓記 - 6
「キングトロールと戦ったぁっ!?」
帰って訓練結果の報告をした途端、レミアが大声を上げた。
「そういえば、確かに我が国の首都ではそんな話もありましたわ」
「知ってたのか?」
「ええ。ですからわたくし、今日1日しか休暇が取れなかったんですもの」
「で?戦ったわけ?あれにあんた程度の魔法剣が聞くとは思わないんだけど?」
「戦ったよ。って言っても、決め手はたまたま駆けつけたペリートのオーブだったけどな」
「はぁ……、そう……」
ため息混じりにそう呟くと、レミアは突然俯いた。
胸の前で腕を組んだところを見ると何やら考えているらしいけれど、何を考えているかまでは当然ながらわからない。
不安になった俺は、全く顔を上げないレミアに声をかけた。
「あの……?」
「ああ、ごめん。これで一応訓練は終了かな」
「えっ!?」
「咄嗟のときに使えたでしょう?魔法剣」
「あ、ああ。まあ……」
無我無中であまり覚えていないけれど、確かに一度は使ったんじゃないかと、思う。
「なら終了。今までお疲れ様。リーナも、ありがとう」
「いえいえ。ではわたくしは失礼いたしますわ」
にっこりと笑うと、リーナはそのまま帰っていく。
当の俺は、未だにレミアの言った言葉を理解できなくて、その場に立ち尽くしていた。
「?何?どうかしたの?」
「いや……。まさか、こんなにあっさり終わるとは思ってなくて」
「まだやって欲しいならもう1回行く?」
「と、とんでもない!それは遠慮させていただきます!」
「そう。残念」
そう言ったレミアの表情は本当に残念そうで、俺は思わず顔を引き攣らせた。
けれど、ここで余計なことを言って、せっかく無事に終わった特訓に再挑戦、なんてことになるのも冗談じゃない。
ここは、先手必勝だ。
「レミア」
「ん?」
「ありがとう」
素直に礼を言うと、レミアは驚いたように目を瞠った。
何だよ。そんなに驚くことないだろう。
そう文句を言おうとした、そのとき。
「……どういたしまして」
遅れてやってきたその言葉に、俺は驚いた。
驚く俺ににやりと笑顔を見せると、レミアはそのまま野営地に戻ってくる。
暫くそのまま呆然としていた俺は、暫くして漸く我に返って、慌ててあいつの後を追った。
こうして俺の魔法剣の特訓は、無事に幕を閉じたんだ。